夜須町 牧の谷集落

福岡県夜須町 牧の谷集落跡 #

探索日 #

  • 探索日 : 2018年12月
  • ページ最終更新日 : 2022年5月28日

牧ノ谷集落跡 #

牧ノ谷集落は、福岡県夜須町の廃集落。 溜池の牧の池建設による水没のため離村したと思われるが、宅地の一部は水没を逃れているようである。

かつての集落 #

福岡県地理全誌には、

吹田村
槙(マキ)五戸
槙は本村の北十一町にありて、御笠郡山家村に隣れり。
槙に観音堂あり

筑前國續風土記附録の巻之十三には

吹田村
〇面白塚 石窟也。支村牧村の山にあり。
 其口三尺許、奥に入事四間餘、口は南にむかへり。
いかなるゆへに面白塚と名付しにや。

とある。


集落の現状 #

牧ノ池ため池 #

溜池 堰堤からの風景 牧の池 堰堤からの風景。探索日は貯水量が少なかったため、水底が干上がり地上に露出している部分があった。 この溜池建設により集落の耕地の大部分が水没した。 一方で宅地の一部は山の斜面にあり水没を逃れた。

石碑たち 堰堤近くの石碑と祠。

石碑1 石碑2 石碑から得られた情報をまとめると以下のようになった。

昭和十六年一月:農業用水の確保のために溜池の建設が計画され起工
昭和十九年三月 竣工
戦時中の資源不足の影響もあり、漏水等が起こる。
このため昭和三十二年一月から補強工事が行われ、
昭和三十四年三月竣工
その後老朽化対策として、
平成十年度から平成十三年度まで改修工事が行われる。

祠の表面 祠の裏面 皇紀二千六百四年という表記に時代を感じる。これは溜池の完成した昭和十九年と一致する。

集落跡地 #

宅地跡 石垣 宅地跡の風景。これらは山の斜面にあったため水没を逃れている。 古びており部分的に崩れている所もあったとはいえ、切込みハギの石垣が残っていた。

宅地跡 石垣2 こちらの石垣は野面積み。緩斜面に沿って段状の地形が展開していた。

畳の縁 散乱していた屋根瓦 落ちていた遺物。上は畳の縁、下は屋根瓦。 このほか食器の破片なども発見できたが、最近のプラスチックゴミも目に付いた。 これらは不法投棄によるものだろう。

瓶 この瓶の表面には右書きの「日本麥酒鑛泉株式會社」と、三ツ矢のロゴのエンボスが確認できた。
底面には「3」のエンボスがあり、インターネットで調べたところ、 この会社は1922~1933年まで存在しており、これはサイダーの瓶であるという。
80~90年前の遺物だが、集落が現役のころのものだろうか。

井戸 井戸の跡も発見できた。 ボンヤリ探索していたら落ちる可能性もあるわけで、今後は気を付けたいと思った。 祠1 祠2 小高い丘の上にあった祠。 福岡県地理全誌に記述のあった観音堂であろうか。 最近建て替えられたのか、やや新しい感じがした。

墓跡 遠景 宅地跡の南東にある、かつての集落を見下ろす小高い山の斜面では墓地を発見した。 いずれも管理されておらず風化されるがままの状態であった。

墓跡 近景 この墓石は明治期のものであるようだ。